母親になり、娘と向き合い、カウンセラーの道へ。飯塚 和美

きっかけは不登校になった娘を
少しでも理解したいと思ったことから。

娘が不登校になったことがきっかけでした。家にいて、顏をあわせると、
やっぱりぶつかってしまうんです。焦るんですよね、学校に行かせなきゃって。
今ならまだ学校に間に合う。そういう気持ちで娘を追いつめてしまって。
そんなとき、カルチャー教室のカウンセラーの養成講座が目に留まったんです。

娘は潔癖症でいじめが大嫌い。いじめに加担しなかったため、いじめられてしまったのです。
娘が不登校になった段階で、なんでこんなに弱いんだろうって思っていました。
子どもがいじめられて学校に行けなくなったことが、なかなか理解できませんでした。
私は足が悪くていじめられたときも、人気者の男子と仲良くして
いじめられたときも、自分で解決しました。
ハンディはあるけれど、幸せだと思っていたこともあり、自己肯定感が強かったのでしょう。
それは病弱な父の代わりに家計を支えていた母が、自分の睡眠時間を削ってでも
私に時間を割いてくれていたことに、深い愛情を感じていたからだと思います。
私自身、親を早くに亡くしているので、いつどうなるかわからないという気持ちが強く、
子どもには早く自立させたいという思いがありました。それが、逆効果になったのです。

じつは不登校の子の親になったときに、周りの大人たちも変化しました。
当時、学校の役員をしていたので、それまであまり知らないお母さんたちからも
よく声を掛けられていたのですが、なんとなく余所余所しく感じることも。
行けども行けども、向こうのほうに明かりがあって出口が見つからない。
そんな状態でした。同じように悩んでいる方がたくさんいると思うので、
そんな方に「ちゃんと出口は見つかるよ」と伝えてあげたいと思ったのです。
そして、プロのカウンセラーをめざして学びはじめました。

病気になると、完治に時間がかかる。
そうなる前に、心のケアができる場所に。

2010年に資格を取り、カウンセラーとして仕事をはじめ、2013年1月に川口に
カウンセリングルームを開きました。悩んだときや心が苦しいときに、
もっと気軽にカウンセリングを受けてほしいという思いから、
初回の料金をあえて相場よりリーズナブルに設定しています。

20歳くらいの男の子が彼女のことで相談に来ることもありますし、
心理学やカウンセラーに興味のある方で、気軽にいらしてくださる場合もあります。
またビジネスマンの方で、プレゼンテーションの前日に来られる方もいらっしゃいます。
まだまだカウンセリングといえば病気の人が行くものという空気がありますが、
気軽に来ていただけるのはうれしいことです。敷居は低いほうがいいと思うんですね。
病気になってしまうと、完治するまですごく長い時間がかかってしまう。
そうなる前に、心のケアができるとずいぶん違うと思います。

また、その逆もしかり。たとえば会社にイヤな人がいて、誰に相談しても、
「その人は先輩だからあなたが変わらなきゃ」と説教をされてしまい、どうにもならない。
その場合、カウンセリングを受けると、受け入れてもらえた、話を聞いてもらえたことで
よかったと帰ることができます。
でも病院に行くと、適応障害と言われて薬を渡されてしまうこともあるのです。


つらそうな顏で来た方が、うれしそうな顏で
帰られると、素直によかったと思える。

カウンセリングに来られた方が、私と話をされているときはとてもいい状態なのです。
それが何日か続いて、また落ち込んでいる状態に戻ったりしながら、カウンセリングを
続けることで、次第に心の状態がよくなっていく。カウンセリングはその繰り返しだと
思うんです。その中で少しずつでも前進している様子がわかると、すごくうれしいですね。

ご本人が「催眠療法でないとダメだ」と思われていて、精神科にも行かれていた方を
何度かカウンセリングをするうちに、私と話すだけで本人が忘れていた小さいときの
感情を思い出されるようになりました。
「別に催眠療法でなくてもこういうことってあるんですね」と驚かれて。
このときは、彼女と私が話すことで、このような効果が出たこと、
そしてこのような信頼関係が築けたことを本当にうれしく思いました。

カウンセリングには、さまざまな悩みを抱えた方がいらっしゃいます。
つらそうな顏をして来られた方がうれしそうな顏になって帰られる、
先生にいい話ができるようにがんばるというお礼のメールをいただく、
次のカウンセリングで、何年もぐっすり眠れなかったけれど、
ここに来たら、何年ぶりかで一度も起きずにぐっすり眠れたとお話しいただくと、
素直によかったなと思えるし、やり甲斐も感じます。
結局は自分の足で立って、歩いていただかなくてはいけないので、
その小さな一歩を踏み出すお手伝いしているという感覚に近いかもしれません。

最後に、こんなことも聞きました!

〈カウンセラーの資質として大切だと思うことは?〉
批判的でないこと、思いやりがあること。
批判的な気持ちになってしまうと、カウンセリングが進まなくなります。
また、表向きの言葉の意味に引っ張られないこと。ポジティブな言葉も、
話している本人にとってはネガティブなことにつながっている場合もあります。
〈自分自身のメンタルケアのためにしていることは?〉
ポップスコーラスをしたり、カラオケをしたり、普段からストレスを
ためないようにしています。悩んだときなどは、カウンセリングを学んだ友人と
電話で話をすることも。お互いに勉強しているので気づきや理解が早くなります。
〈話を聴くプロに会ってみたい方へ、ひとこと!〉
カウンセリングを受けることに戸惑いがある方もいらっしゃるでしょう。
心や体にためこんでいるといいことはありません。
話すだけで、ぐっすり眠れることもあるので、もっと気軽に来てください。
〈話を聴くプロをめざす方へ、ひとこと!〉
どの仕事もそうですが、なれたらいいなでなれる職業ではありません。
人に頼っていたりするとなかなか進まない。教わる立場をいつまでも続けるのではなく、
自分でこうなりたいに向かってやっていくことも大事です。

飯塚 和美

カウンセリングルーム大空
プロフェッショナル心理カウンセラー 一般

夫、娘、息子の4人家族。企業に就職後、専業主婦に。
2010年に日本カウンセラー連盟 心理カウンセラーの資格を取得。
2013年1月にカウンセリングルーム大空を開設し、
個人のカウンセリングをはじめ、グループでの教室やワークも開催。
週に一度、緩和ケア病棟でのボランティアに参加している。
著書『考え方で明日は変わる』を出版予定。